予防接種について

予防接種の目的

石井小児科・心臓小児科02
1. 私は、小児集中治療室を有する大学病院で長年小児救急医療に携わってきました。

はしかによる肺炎、重症百日咳、結核性髄膜炎、重症ロタウイルスけいれん、インフルエンザ菌による可能性髄膜炎、肺炎球菌による化膿性髄膜炎、おたふくかぜによる難聴、インフルエンザ脳症、インフルエンザ肺炎など重症の感染症のため大切な命をなくした子ども達、命は助かっても重度の後遺症を残した子ども達をたくさん診てきました。

これらの重症感染症は予防接種により防げるものです。小児救急医療の現場では本当に予防接種の重要性を感じていました。今回、石井小児科・心臓小児科小児科を開設するに当たり予防医療を大きな柱にする所存です。

2. 子ども達の命を脅かす最大の敵は感染症です。感染症に対して軽症感染または不顕性感染をおこさせ、被害をできるだけ小さくするのが予防接種の目的です。

3. 予防接種の第一の目的は接種した個人を守る、第二に接種した集団を守る、、第三に集団を守ることによって感染症の流行を阻止し接種できない弱者も守ることです。

それに加えて、第四の目的としては、海外とも連携し地球上から感染症を根絶または排除していくことです。予防接種により予防できる疾患は可能な限り予防していくのが、現代先進国における共通の目標になってきています。

各予防接種について説明いたします。
石井小児科・心臓小児科01

B型肝炎ワクチン

B型肝炎ワクチン(不活化ワクチン)

B型肝炎とは
B型肝炎(HB)ウイルスの感染を受けると、急性肝炎となりそのまま回復する場合もあれば、慢性肝炎となる場合もあります。一部劇症肝炎といって、激しい症状から死に至る場合もあります。また、年齢が小さいほど、急性肝炎の症状は軽いかあるいは症状はあまりはっきりとしない一方、ウイルスがそのまま潜んでしまう持続感染の形を取りやすいことが知られています。HBウイルスが肝臓内部に潜み、年月を経て慢性肝炎、肝硬変、肝がんなどになる事があります。

B型肝炎ワクチン(不活化ワクチン)
B型肝炎ワクチンによる予防は持続感染を防ぎ、将来発症するかもしれない慢性肝炎、肝硬変、肝がんを防ぐためです。

接種スケジュール
生後2ヶ月に至った時から生後9ヶ月に至るまで、HBワクチンを27日以上の間隔で2回皮下注射します。第1回目の接種から139日以上の間隔をおいて3回目を皮下注射します。

副反応

本ワクチンは、他のワクチンに比べても副反応は軽徴であり、頭痛、発熱、局所の腫脹(はれ)などを数%程認めるに過ぎない。

インフルエンザ菌b型(ヒブ、Hib)ワクチン

インフルエンザ菌b型(ヒブ、Hib)とはどの様なものでしょう
ヒブの漿膜多糖体PRPに対する抗PRP抗体は感染制御抗体であり、抗体価が低い生後2ヶ月から5歳までは重い感染症になりやすいです。

ヒブによる重い感染症
1. 細菌性髄膜炎:多くは発熱と嘔吐で始まり、けいれん、意識障害へと進行し死亡することもあります。一部は、突然のショック症状で発症し、短期間で死亡します。1歳未満の発症が約40%であり、生後2ヶ月から増加します。死亡率は約5%、聴力障害を含む後遺症率は約20%です。
2. 菌血症:多くは重篤な症状に乏しい潜在性菌血症ですが、3%は髄膜炎などの重症疾患の併発や移行があります。

接種スケジュール
2ヶ月から7ヶ月未満児に3回、4-8週の間隔で皮下注射します。追加接種は初回接種の7ヶ月以上の間隔をおいて1回皮下注射します。

副反応
副反応としては局所反応が中心で発赤42%、腫脹(はれ)18.7%、硬結(しこり)17.8%、疼痛5.6%、全身反応は発熱2.5%、不機嫌14.7%、食思不振8.7%が認められます。

小児用肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌とはどの様なものでしょう
肺炎球菌は、子どもの多くが鼻の奥に保菌していて、ときに細菌性髄膜炎、菌血症、肺炎、副鼻腔炎、中耳炎といった病気を起こします。特に重篤なものは肺炎球菌による化膿性髄膜炎です。肺炎球菌による化膿性髄膜炎は、ワクチン導入前は年間150人前後に発症していました。致命率や後遺症例(水頭症、難聴、精神発達遅滞など)の頻度はインフルエンザ菌b型(ヒブ、Hib)による髄膜炎よりも高く、約21%が予後不良されています。

肺炎球菌ワクチンとは
子どもで重い病気を起こしやすい13の血清型について、子どもの細菌性髄膜炎などを予防するように作られたのが、小児用肺炎球菌ワクチン(13価肺炎球菌結合ワクチン)です。

接種スケジュール
2ヶ月から7ヶ月未満児に27日以上の間隔をおいて3回皮下注射します。追加接種は、生後12月から生後15月に至るまでの間に、初回接種終了後60日をおいて1回皮下注射します。

副反応
副反応は、接種局所の紅斑(67.8-74.4%)、腫脹(はれ)(42.7-57.1%)、全身反応として主なものは発熱(37.5度以上)で32.9-50.7%が認められています。

ロタウイルスワクチン(生ワクチン)

ロタウイルス感染症
生後6ヶ月から2歳をピークとし、5歳までにほぼすべての乳幼児がヒトロタウイルスに感染し、下痢、嘔吐、発熱などの急性胃腸炎症状を呈します。嘔吐、下痢に伴う脱水やけいれん、腎不全、脳症などの合併のため死に至る症例もあります。

接種スケジュール
1価ワクチン(ロタリックス)は2回(1回目は生後6週以後、2回目は4週間以上の間隔をあけて生後24週までに完了)、5価ワクチン(ロタテック)は3回(1回目は生後6週以後、2回目3回目は4週間以上の間隔をあけて生後32週までに完了)経口摂取します。1回目の接種は生後14週6日までに行う事が推奨されています。

副反応

副反応の主なものは、ぐずり、下痢、咳、鼻水などです。市販後調査ではわずかな腸重積の増加が報告されています。腸重積症状(ぐったりする、顔色が悪い、繰り返し起きる嘔吐、血便、お腹の張り)が見られた場合は医師の診察を受けて下さい。

4種混合ワクチン

4種混合ワクチン(DPT-IPV 沈降百日咳ジフテリア破傷風不活化ポリオ混合ワクチン)不活化ワクチン

百日咳
百日咳菌の飛沫感染で起こります。百日咳は普通の風邪のような症状(カタル期)で始まるが、その後次第に咳がひどくなり、顔をまっ赤にして連続的に咳き込むようになります。咳の後急に息を吸い込むので、笛を吹くような音が出ます。乳児百日咳の合併症は、肺炎(22%)、けいれん発作(2%)、脳症(0.5%未満)、死亡などです。

ジフテリア
ジフテリア菌の飛沫感染で起こります。症状は、高熱、のどの痛み、犬吠様の咳、嘔吐などで、偽膜と呼ばれる膜ができ窒息死することがあります。
ジフテリア毒素遺伝子をもつ菌が毒素を産生するが、その毒素により脳が障害を受けて昏睡に陥ったり、心筋炎を起こすと死亡する危険が高くなり、致命率は5-10%です。

破傷風
破傷風は土の中にいる破傷風菌が、傷口からヒトの体内に入ることによって感染します。菌の毒素のため、筋肉の硬直性けいれんを起こします。やがて全身の硬直性けいれんを起こすようになり、治療が遅れると死に至ります。

ポリオ(急性灰白髄炎)
口から入ったポリオウイルスは、咽頭と腸管で増殖し、血行性あるいは神経軸索に沿って脊髄まで侵入・増殖して、前角細胞運動神経細胞を特異的に傷害します。ポリオはまったく無症状の不顕性感染も多い(95%)ですが、5%弱が感冒様症状だけの「不全型」、1-2%は嘔吐、項部硬直、四肢痛を伴う「髄膜炎型」、0.1-0.2%だけが「麻痺型」となり臨床的にポリオを発症したことになります。

接種スケジュール
初回接種は生後3ヶ月から20日から56日までの間隔をおいてDPT-IPVワクチンは3回皮下注射します。追加接種は初回接種終了後12-18ヶ月経過した者に接種します。

副反応
発熱(10%前後)、接種部位の赤み、腫れ、しこり、発疹などがみられることがあります。通常数日以内に自然に治ります。

BCGワクチン(生ワクチン)

結核
我が国では結核患者は減少しましたが、まだ2万人前後の患者が毎年発生しています。大人から子どもへ感染することも少なくありません。乳幼児は結核に対する抵抗力が弱いので、全身性の結核症にかかったり、結核性髄膜炎になる事もあり重い後遺症を残す可能性があります。

BCGワクチン(生ワクチン)
BCGワクチンは、重症になりやすい乳幼児の結核を防ぐ効果が確認されています。

接種スケジュール
生後1歳までに受けることとなっています。標準的接種期間として生後5ヶ月から8ヶ月が推奨されています。

副反応
1. 接種後1-2ヶ月後に接種部位が大きく盛り上がります。膿が出たりかさぶたがが破れる場合は消毒が必要です。
2. 副反応として、脇の下のリンパ節の腫れ、発疹(結核疹)が報告されています。まれなものとしてはBCG骨炎があります
3. もし接種前にすでに結核菌に感染していた場合、近日中に接種部位に強い反応がみられます(コッホ現象)、検査や経過の観察が必要です。かならず当院へ連絡して下さい。

麻疹風疹混合(MR)ワクチン

麻疹風疹混合(MR)ワクチン(生ワクチン)

麻疹(はしか)

麻疹ウイルスによる飛沫核感染で起こります。11日前後の潜伏期間の後、咳・鼻水・結膜充血などのカタル症状と38度前後の発熱が2-3にちみられます。一時的な解熱傾向の後、再び急激に39-40度の高熱となり、頭部から体幹、四肢へ赤色斑丘疹が出現します。発熱は4-5日間続きます。苦悶様顔貌になります。発疹は、鮮紅色から暗赤色になり色素沈着へと変化していきます。

風疹(3日はしか)
風疹ウイルスによる飛沫感染の急性熱性発疹性感染症です。2-3週間の潜伏期間の後、発疹、発熱、リンパ節腫脹(耳介後リンパ節腫脹が特徴的)がみられます。発疹は通常、小発赤疹で色素沈着は見られません。症状は比較的軽いですが、まれに血小板減少性紫斑病や脳炎、溶血性貧血などの合併が見られます。

先天性風疹症候群:妊娠初期の妊婦が風疹にかかると胎児に伝染し、先天性風疹症候群となることあり、難聴、先天性心疾患、白内障、網膜症などを起こします。

接種スケジュール
通常は1歳から接種します。定期接種としては第1期(1歳)、第2期(就学前の1年間)の2回接種です。

副反応
接種後8日ごろをピークに、5-15%程度に発熱が、5%程度に発疹が見られます。治療を必要とせずに軽快します。

水痘(水ぼうそう)

水痘(水ぼうそう)ワクチン(生ワクチン)

水痘(水ぼうそう)
水痘は、水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV))に初めて感染した時に見られる急性の感染症で、直接接触、飛沫あるいは空気感染で広がります。ひとたび感染すると一生、体の中(三叉神経節や脊髄後根神経節)に潜伏感染し、加齢や免疫抑制状態で再活性化し、帯状疱疹を発症します。

水痘の潜伏期間は通常2週間程度(10-21日)です。発疹は斑点状の赤い丘疹から始まり、その後3-4日は水疱(水ぶくれ)となり、最後は痂皮(かさぶた)を残して治癒します。発熱を伴うこともあります。通常、1週間程度で自然に治りますが、まれに脳炎や肺炎、肝機能の異常を伴うことがあります。

接種スケジュール
生後12ヶ月から15ヶ月に達するまでの期間を標準的な接種期間とし1回目の接種を行います。標準的には6ヶ月から12ヶ月の期間をおいて2回目の接種を行います。

副反応

健常者への水痘ワクチン接種による重大な副反応はほとんどありません。発熱、接種部位の発赤や腫脹が見られることもあるが、頻度も低く軽徴です。

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)ワクチン(生ワクチン)

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は、ムンプスウイルスによる全身感染症です。患者の鼻汁などにより飛沫感染します。潜伏期間は14-25日間です。まわりの人に感染させる可能性のある期間は、発病数日前から耳下腺、顎下腺、舌下腺の腫脹が始まった後5日を経過するまでです。

主要症状は耳下腺の腫脹で、境界不鮮明で均一な柔らかい痛みを伴った腫脹を示します。顎下腺、舌下腺が腫脹をする事もあり、約80%で発熱を伴います。おたふくかぜの3-5%で無菌性髄膜炎を起こし、約0.1%で感音性難聴(ムンプス難聴)を起こします。この難聴は一生治癒しません。

接種スケジュール
1歳以上で接種します。日本小児科学会はおたふくかぜワクチンの2回接種を推奨しています。2回目はMRワクチンと同時期の就学前を推奨しています。 副反応 生ワクチンのため、接種後2-4週間で唾液腺の腫脹や発熱などの副反応が起こることがあります。

また5000-6000例に1例程度、無菌性髄膜炎を起こします。おたふくかぜワクチンによる無菌性髄膜炎の予後は良好で、障害を残すことはありません。

乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン(不活化ワクチン)

日本脳炎
日本脳炎ウイルスの感染で起こります。ヒトから直接ではなくブタなどの体内で増えたウイルスが蚊によって媒介され感染します。7-10日の潜伏期間の後、高熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなどの症状を示す急性脳炎になる事があります。

接種スケジュール
第1期の定期接種の対象は生後6ヶ月から90ヶ月にあるお子さんです。標準的な接種方法は、3歳に達した時から4歳に達するまでの期間に6日から28日までの間隔をおいて2回、4歳に達した時から5歳に達するまでの期間に1回接種を行います。第2期は、9歳以上13歳未満のお子さんです。標準的な接種方法は、9歳に達した時から10歳に達するまでの期間に1回接種を行います。

副反応
発熱は第1期初回の翌日が最も多く2.4%でした。接種した部位の腫れなどの局所反応は第2期での発生が最も多く、接種1日目がピークで3.8%でした、接種後の重篤症例として厚生労働省に報告されたものは9例で頻度は0.0005%でした。9例中7例は回復または軽快、2例は不明でした。死亡の報告はありません。
石井小児科・心臓小児科